円覚寺のご本尊は十一面観世音菩薩ですが、脇侍は毘沙門天と吉祥天です。
吉祥天(きちじょうてん・きっしょうてん)は、仏教における幸福や繁栄、家庭円満を象徴する女神です。
その起源は、古代インドのヒンドゥー教で財運や美を司るラクシュミー女神にあり、日本では毘沙門天の妃としても信仰されています。
吉祥天は、特に女性からの信仰を集める存在であり、美しさや健康を願う際、あるいは家庭内の調和を保ちたいときに祈られることが多い女神です。
吉祥天を祈念する際に唱えられるのが「真言」です。
真言とは、仏や菩薩、天部の神聖な力を言葉として具現化したものであり、その響き自体に霊的なエネルギーが宿るとされています。
密教の教えでは、真言を唱えることによって仏と心を通わせ、その慈愛や福徳の力を自らの内に取り入れることができるとされています。
これにより、幸福や繁栄を願う祈りがより深まり、吉祥天のご加護を受けると信じられています。
この記事では、吉祥天の真言について、具体的な唱え方やご利益、さらには信仰の背景などを初心者にもわかりやすく解説します。
吉祥天の真言は?
吉祥天の真言は、幸福や繁栄、美しさ、そして家庭円満を願うために唱えられる神聖な言葉です。
この真言は、吉祥天の持つ力とつながるための「マントラ(呪文)」として、古代から伝えられています。
吉祥天の真言は以下の通りです。
「オン マカ シリ エイ ソワカ」または「オン マカ シリヤ エイ ソワカ」
この真言には、幸福や豊穣を呼び込む言霊の力が込められています。
言葉ごとにその意味を見ていきましょう。
「オン」:「帰依」「供養」を表します。
「マカ」:偉大な、または尊いという意味。吉祥天が持つ広大な慈愛と繁栄のエネルギーを象徴しています。
「シリエイ」:繁栄、富、吉祥を意味する重要な言葉。ラクシュミー女神や吉祥天の名前を表します。
「ソワカ」:「成就しますように」という結びの言葉。祈りを完了させ、神仏に届ける意味を持ちます。
吉祥天真言を唱えると得られるご利益
吉祥天の真言「オン マカ シリ エイ ソワカ」を唱えることで、さまざまなご利益が得られると信じられています。
吉祥天は「幸福の女神」「美と繁栄の象徴」として、特に家庭の平和や個人の調和に対する祈りに応えてくれる存在です。
吉祥天の真言を唱えることで期待できる主なご利益を詳しく解説します。
幸福と繁栄
吉祥天は、その名前が示す通り「吉祥(幸運や繁栄)」を象徴する女神です。
真言を唱えることで、次のようなご利益があるとされています。
- 家庭内の平和:家族間の関係が穏やかになり、調和の取れた環境を築く助けとなる。
- 仕事運や社会的成功:ポジティブなエネルギーが働き、職場や人間関係での成功を後押しする。
美と健康
吉祥天は「美の女神」としても知られ、特に女性からの信仰を集めています。
そのため、次のようなご利益があるとされています。
- 外見の美しさ:肌の艶や髪の美しさを保つ力があると信じられています。
- 内面の美:真言を唱えることで心が穏やかになり、内面的な輝きが増すとも言われています。
- 健康の守護:心を安定させることでストレスが軽減され、結果として健康的な生活が送れると考えられます。
財運と豊穣
吉祥天はインド神話におけるラクシュミー女神が起源であり、「財宝をもたらす者」としても信仰されています。
真言を唱えることで、次のようなご利益を得られると言われています。
- 財運向上:生活の中で金銭的な余裕が生まれる、または商売繁盛につながる機会が増える。
- 豊穣(ほうじょう)の象徴:農作物の実りや、物事が順調に進む状況を引き寄せる。
厄除けと調和
吉祥天の祈りには、厄を除き、穏やかな人間関係を築く力もあるとされています。
- 厄除け:真言を唱えることで災厄から守られ、安心感を得られる。
- 調和と円満:家族や友人、職場の人間関係が円滑になり、平和な環境を保つ助けとなる。
吉祥天真言の書き方
吉祥天の真言「オン マカ シリ エイ ソワカ」
後日追記します!
吉祥天とは?
吉祥天(きちじょうてん・きっしょうてん)は、仏教において幸福、繁栄、美しさ、そして家庭の調和を象徴する女神です。
その起源は古代インドにあり、ヒンドゥー教の女神ラクシュミーに由来します。
仏教に取り入れられた後、吉祥天は毘沙門天の妃として位置づけられ、家庭円満や個人の幸福を守護する存在として信仰されるようになりました。
以下では、吉祥天の起源、特徴、日本での信仰の歴史について詳しく解説します。
吉祥天の起源:ラクシュミー女神との関係
吉祥天のルーツは、ヒンドゥー教における「ラクシュミー(Lakshmi)」女神です。
ラクシュミーは、ヴィシュヌ神の妃で、財運や美、繁栄を司る神であり、インドでは非常に人気のある神の一人です。
ラクシュミーは豊穣の象徴であり、その姿は富を表す金貨や美しい蓮の花とともに描かれます。
仏教がインドから東アジアへと広がる過程で、ラクシュミーの信仰は仏教に取り入れられ、吉祥天という形で仏教世界の一部となりました。
そのため、吉祥天は財宝や幸福の守護者としての側面を持ちつつ、仏教的な慈悲や調和の概念を反映した神格へと発展しました。
仏教における吉祥天
仏教では、吉祥天は大吉祥天、功徳天、吉祥功徳天などとも呼ばれることもあります。
毘沙門天の妃とされ、家庭内の調和を象徴する神として位置づけられています。
また、毘沙門天が戦いや武運の神としての側面を持つのに対し、吉祥天は女性的な優しさや美しさ、繁栄を象徴します。
この夫婦の組み合わせは、力強さと穏やかさの調和を表しており、宇宙の調和や家庭の平和を体現しているとも言われています。
日本における吉祥天の信仰
日本では、吉祥天は平安時代から広く信仰されるようになりました。
当初は貴族の間で、家庭内の平和や繁栄を願う神として祀られていましたが、時代を経るにつれて庶民の間にも浸透しました。
現在では、特に以下のような役割が強調されています。
- 家庭円満の守護神:家庭内の調和を保ち、家族が幸せで平和に暮らせるように祈る対象となっています。
- 女性の守護神:美や健康を保つ力があるとされ、多くの女性が吉祥天に祈りを捧げています。
- 財運と繁栄の象徴:商売繁盛や経済的安定を願う人々からの信仰も厚く、豊かさを象徴する神としての側面も重視されています。
吉祥天の特徴と象徴
吉祥天の姿には、以下のような特徴があります。
- 美しい容姿:吉祥天は、微笑みをたたえた美しい女性として描かれることが多く、幸福と繁栄の象徴とされています。
- 豊穣を表す持ち物:吉祥天は、蓮の花や壺、宝石などを持つ姿で表現されることが多いです。これらは、生命力や富の象徴とされています。
- 穏やかな佇まい:吉祥天の像や絵画には、心の安らぎを感じさせる穏やかな表情が特徴的で、見る者に安心感を与えます。
吉祥天は七福神に含まれていた?
吉祥天は、かつて七福神の一柱として考えられていた時期があるとされています。
ただし、現在の一般的な七福神の構成(恵比寿、大黒天、弁才天、毘沙門天、布袋尊、福禄寿、寿老人)には含まれていません。
その理由や歴史的背景を以下に詳しく解説します。
七福神とは?
七福神の信仰は、室町時代末期に成立したとされ、さまざまな宗教の神々が融合した民間信仰として発展しました。
その起源には、仏教・道教・神道の影響が色濃く反映されており、それぞれの宗教の神々が持つ福徳の要素が統合されたものと考えられています。
特に、仏教経典「仁王経」に記される「七難即滅、七福即生」の思想が、七福神信仰の背景にあるとされます。
「仁王経」では、世の中に降りかかる「日月の異変、二十八宿星の異変、火災、水害、風害、干害、盗難」といった七つの災難が速やかに消え去り、代わりに「寿命・裕福・人望・清廉・愛敬・威光・寛大さ」という七つの福が生じることを説いています。
こうした仏教的な考え方に、中国の道教に由来する財神信仰や、日本の神道における福神信仰が融合し、七福神という独自の信仰体系が生まれました。
特に江戸時代に入ると、庶民の間で七福神巡りが盛んになり、商売繁盛や家内安全を願う風習として全国に広まっていきました。
このように、七福神信仰は、宗教の枠を超えて幸福を願う民衆の心から生まれた信仰であり、日本独自の福徳を象徴する存在として現代にも受け継がれています。
初期の七福神における吉祥天
七福神が現在のような形で定着する前の中世から近世初期にかけて、七福神の構成には地域差や変動がありました。
その中で、吉祥天が七福神の一柱として祀られていた記録が存在します。
寿老人と福禄寿を1体として、吉祥天を含めて7尊とした時代がありました。
吉祥天は、幸福や繁栄、美を象徴する女神であるため、特に豊穣や家庭円満を願う信仰が強かった時期に、七福神の一柱とされていたことがありました。
弁才天との交代
吉祥天が七福神に含まれていた時期がある一方で、現在では「弁才天」が七福神の女性神として定着しています。
弁才天もまた、インドの女神サラスヴァティーを起源とする存在で、学問や芸術、財運を象徴します。
そのため、弁才天の役割が吉祥天と重なる部分があり、次第に弁才天が七福神の構成に固定され、吉祥天は七福神の枠から外れたと考えられています。
俗説では、七福神の中で唯一の若くたくましい男性神であった毘沙門天をめぐり、正妻である吉祥天と弁才天の間で争いが起こったという話・・・。
気の強い弁才天が策略をめぐらせて吉祥天を七福神の座から追い出し、自らが毘沙門天の隣に立つことになったという説が語られることもあります。
このため、現在では七福神の中で唯一の女性神として弁才天が定着し、吉祥天は七福神から外れたとされています。
さらに、このような逸話が語り継がれたことで、弁才天は嫉妬深い女神とされるようになり、「恋人同士で弁才天を祀る寺社に参拝すると別れてしまう」という俗説が生まれたとも言われています。
もちろん、これは後世に作られた俗説のひとつであり、実際の信仰の変遷には、時代背景や仏教・道教・神道の影響が複雑に絡み合っています。
しかし、このような伝説が語られること自体、七福神の成立にはさまざまな物語や民間信仰が関わっていたことを示していると言えるでしょう。
現在でも独自に吉祥天を七福神に含む例がある
一部の地域では、現在でも吉祥天を七福神の一柱として祀る場合があります。
たとえば、地域独自の七福神巡りでは、吉祥天が組み込まれているケースもあります。
- 八王寺七福神(東京都):令和8年からは八王寺八福神に名称変更になるそうです。
- 八千代八福神(千葉県)
まとめ
吉祥天の真言「オン マカ シリ エイ ソワカ」を唱えることは、単なる祈りの行為にとどまらず、自分自身の心と向き合い、前向きな気持ちを育てるための時間となります。
現代の忙しい日常の中で、吉祥天の真言を唱えることは、心の平和や幸福を感じるための大切な習慣となるでしょう。
この記事では、真言の意味やご利益について詳しく解説しました。